2000年12月16日  Voodooが消える日


Voodoo(ブードゥー)といっても宗教の名前ではない。PCゲーマーなら誰でも知ってる3Dグラフィックスアクセラレーターのチップの名前だ。このチップを作っているメーカー 「3dfx社」 が12月15日の取締役会で、資産の大半を売却し、会社を解散する決議がなされたとの発表があったのだ。

Voodooシリーズは初代Voodooから始まってVoodoo2、VoodooBanshee、Voodoo3、Voodoo5と常にパワーアップを繰り返してきた往年の名チップである。Vodooチップ搭載のグラフィックカードはゲーマーにとって必須の選択であったのだ。VoodooチップシリーズはGlideと呼ばれる独自の3DグラフィックスAPIを提供し、多くのGlide対応ゲームが発売された。マイクロソフトがDirectXを開発するまで、3DグラフィックスAPIは事実上Glideしかなかったのだ。(OpenGLも一部あったが・・・・)

しかし、Bansheeが出たあたりから強力なライバルが出現した。NVIDIAである。RIVAシリーズは当時、性能的にはVoodoo3には及ばないまでも安い価格でBanshee並みのパフォーマンスを実現できる画期的なチップとして登場。Banshee搭載ボードとRiva128搭載ボードは価格競争を生み、それまで高価だった3Dアクセラレーターをより身近なものしてくれたのだ。(おりしもマイクロソフトから提供されたDirectXはRivaシリーズとも相性がよく、NVIDIAにとっては大きな追い風ともなった。

その後NVIDIAは Riva128ZX、RivaTNT、RivaTNT2と改良を重ね遂に、Geforce256を誕生させた。このチップの特筆すべきはハードウェアレタリング機能をチップ中に抱合した事によるレタリング能力の飛躍的な増大である。これは多くのゲーマーおよびゲーム開発者が待ち望んだ機能でもあり、今後の新しい3Dグラフィックスチップの方向性を提示したものであった。しかし、3dfxが同時期に発表したVoodoo5にはハードウェアレタリング機能を搭載していなかったのだ。時代の流れを読みそこなったのか、時代の流れに乗るだけの体力が既に無かったのか定かではないが、これを契機に、ゲーマーの間では急速にVoodoo離れが加速していった。

3dfx社の資産の大半の売却先は皮肉にも最大のライバル社であったNVIDIA社である。3dfx社は3Dアクセラレーターチップという市場を築き、常に業界をリードしてきた。そのおかげでパソコンは今までにないリアルな3D映像をリアルタイムに動かすことが可能になったのである。最新技術の牽引役を務めた3Dチップ業界の巨人は世代交替により今、静かに舞台を去ろうとしているのだ。来年発売される(予定?)マイクロソフトのゲーム機X-BoxにもNVIDIA社のチップが採用されることが既に決まっている。 NVIDIA社の隆盛はしばらく続きそうだ・・・・・